いくつになっても、冒険心を忘れない

神の断片 -前日譚-『風騒の街、午前十時』

  • HOME »
  • 神の断片 -前日譚-『風騒の街、午前十時』

 

神の断片 -前日譚-『風騒の街、午前十時』

アマネビューラ島の南端――小高い丘に囲まれた港町エルスティア。

ここでは毎日、騎士団の訓練の音と市場の喧騒、港に届く香辛料の香りが交錯し、まるで大鍋に煮込まれたスープのような人間模様が渦巻いていた。

それは、まだ“神の断片”が姿を見せる前のこと。

剣も魔法も、知識も癒しも、“世界を救う”などという大義からは縁遠く、ただ、目の前の誰かと笑いあうために振るわれていた。

今日もまた、この町に風が吹く。

少しだけズレた、けれど温かな風――

それは、小さな奇跡を育てる“日常”の風騒である。

第1章:道場と朝ごはん

【1】村はずれの道場にて

朝日が差し込む木造の道場には、木刀が打ち合う乾いた音が響いていた。

その中心に立つのは、どこか頼りなげな細身の男。

ジン・ヴァリアント。28歳。黒髪を後ろで束ね、温和な笑みを浮かべた武術家である。

彼は、古の中国拳法「白雲拳」の継承者であり、かつて戦禍の中で師を失った悲しみを胸に、小さな村で道場を構えている。

長剣の模擬刀を構えた相手は――

「いきますよ、師匠!」

鋭い気合いとともに、踏み込んできたのはリリア・シルヴァ。25歳。すらりとした体格と凛とした眼差しを持つ、ジンの一番弟子である。

耳には通信端末、装いは軍服風。武術だけでなく、陣構築や罠解除など、戦略分野にも通じた万能型。

彼女の突きを、ジンは紙一重でかわすと――

「おっとっと……あ」

足を滑らせて、そのまま盛大に背中から転んだ。

「師匠っ!?だ、大丈夫ですか……?」

「……うん、大丈夫。いま重力が、少し強くなっただけさ……」

「重力って変わりませんけど!」

見事なずっこけに、リリアが額を押さえる。

このやりとり、今週だけでも三回目だった。

【2】朝の食卓、天然夫妻の乱入

場所は変わって、道場の台所。

朝食の準備をしているのは、小柄な女性――セレネ・ノクティス。28歳。ふわふわワンピースを着た癒し手で、感受性豊かでやや天然気味。

彼女は三日月の杖をくるくると回しながら、朝のおかゆにハーブを加えていた。

「今日はねぇ、朝露の精霊が“胃に優しい日”って言ってたの。だから……この草、入れても平気!」

「……セレネ、それ、乾燥わらじゃない?」

ふと背後から声をかけたのは、ふくよかな体型の男性。カイ・ノクティス。31歳。賢者然とした服に身を包み、情報端末を抱えた博識な魔術士。セレネの夫。

「うそ!?だって、精霊が……」

「多分、睡眠不足で幻聴だよ、君。」

「むぅ~~~。でも、カイが言うならやめとく!」

そう言って笑顔で鍋をかき回すセレネ

背後のカイは、口元に手を当てながら小さく呟いた。

「……胃に優しくても、腸に爆弾仕込まれたら意味ないからね……」

【3】訪問者、酔いどれ配達屋

そこへ、勝手口がガラリと開く音。

「よっ、みんな~朝から元気か~?」

陽気な声と共に、でかい男が入ってきた。ライ・グラスジンの旧友で、メカいじりが得意な配達屋。大柄でバーボン好き。

シャツのボタンは二つ外れ、持っているのは――

「最新の練習用マナ人形だ。リリアちゃんが注文してたやつな。これ、すっげー暴れるから気をつけろよ?」

「ありがとうございます、ライさん。請求書は私がまとめて……って、え? 今、暴れるって……?」

「うん。封、開けてある。」

「開けるなーっ!」

道場の隅で、リリアの叫びが響き、カイセレネを鍋ごと後ろに引き下げる。

ジンは静かに微笑みながら、刀を取った。

「さて……もう一勝負、かな?」

第2章:市場は戦場、笑いは仕込み

【1】市場、それは物資と精神力の交差点

朝の道場を抜け、石畳の坂道を下れば、港の潮風が香る市場へとたどり着く。

露店がずらりと並び、人々の声が混じり合い、魚、パン、香辛料、布、そして情報までもが飛び交う――

「さあさ!朝採れたての鯖だよー!目が合ったら縁起がいいよー!」

「一緒に目が死んでるんだが……」

リリア・シルヴァは鋭くツッコミながら、フードの中で耳の通信端末に指を添えた。

マリ、現地に到着しました。情報屋からの特殊保存パンの位置、確認を。」

端末の向こうから返ってきたのは、やや低めの女性の声だった。

リリアちゃん、おはよー。パン屋は広場南の二軒目。あとね、今そこに、なぜかボウ姫いるわよ」

「……なぜ“なぜか”で済ませたのです?」

「知りたい?あとで後悔するタイプよ?」

リリアは小さくため息をつきながら、市場の南側へと足を向けた。

道中、なぜか妙にざわついた空気を感じながら、彼女の目に映ったのは――

「貴様らの言ってる“常温”とは何度のことだ!」

──豪快にパン屋のカウンターを叩く、小柄な金髪の少女の姿。

ボウ・チャイ。王族の姫君にして、あらゆる“常識”を非常識と断定して生きる困った存在。

「パンが“冷たすぎる”と言っておろう!それは常識的におかしい!温パンが今の時代のスタンダードだ!」

「うちは冷やして持たせるのが常識なんですってばああ!」

店主の悲鳴が響く中、リリアは素早く割って入った。

「姫。パンにはそれぞれ適温があります。持ち帰るまでの温度低下を想定しての仕様です。問題はありません」

「む……なるほど。つまり“将来への投資”としての冷却、と?」

「さすがに言いすぎです」

【2】天才と天才の“どちらが面倒か”対決

一方その頃、市場中央――古書と香草を扱う露店の前。

「やはり……この写本には“失われた王家の構文”が使われているな」

低く唸ったのはカイ・ノクティス。賢者のような佇まいで本を抱え、何かを考え込んでいる。

その向かいに立つのは、長髪を後ろで束ねた黒スーツの男。

鋭い目と細かすぎる観察眼を持つ男――

サブ・ストリー。王立図書館の職員で、カイの元同僚。知識量ではカイを凌ぐが、雑談の破壊力も随一。

「ふん、君のように“直観から理論へ至る”のではなく、“構造から言語を再構築する”ことが重要だ。君はまた“心で読む”癖が抜けないな」

「君はまた“行間を捨てて文脈を溺死させる”癖が……」

二人は完全に“書物の間”に沈み込み、周囲の客がすっと離れていく。

たまたま通りかかったセレネが、ふたりの真横で囁いた。

「うわ……あれ、入ったら帰ってこられないやつ……」

「帰ってこられないってなに?」

後ろから覗きこんだマウ・キャバが、心配そうに眉をひそめる。

「前にカイさんが“ちょっとだけ”って言ってサブさんと話し始めて……戻ってきたの、夕方だったの」

「……ひとりでコーヒー三杯分の時間か……」

【3】笑いと寒気は突然に

その頃、市場北の野菜売り場。

ジン・ヴァリアントは、片手にじゃがいも、もう片方に木刀を持っていた。

「うーん、この芋は良い“重み”があるな……打撃訓練に使えるかもしれない……」

「買いなさいよ、食べ物だもの」

軽やかな声と共に、現れたのは

マリ・シュガー。清潔感あるパンツスーツを着た情報屋で、ホラーと戦術が大好きな戦略家。

「……それよりね、ジンさん。面白い話があるの」

「ほう。市場の裏に何か遺跡でも?」

「ううん。“幽霊の泣き声”が聞こえる井戸があるのよ」

「……こわっ」

思わずジンが肩を震わせる。その横でマリはにっこり。

「ちなみに昨夜、ライさんが覗いたら……」

「や、やめてください。怖いのダメなんで……」

「うふふ。可愛い顔して腰抜かしてたわ」

「やめてぇ!」

一部始終を見ていたライ・グラスは、遠巻きにバーボンの瓶を揺らしながらつぶやいた。

「……言わないでって言ったのに……女子には勝てねえ……」

【4】市場騒動、そのあとで

リリアが買い物を終えて戻ると、道場ではすでに“芋入り特製シチュー”が煮えていた。

セレネマウが鍋をかき回し、カイはまだサブと話しており、ジンは窓の外を見つめていた。

「……穏やかですね、師匠」

リリアの言葉に、ジンは微笑んでうなずいた。

「戦も、異変も、今は何もない。けれど……今が一番、大切なんだろうね」

そこへ、遅れて入ってきたライが、ふらふらしながら言った。

「なあ……俺、なんか胃の中が……冷たいんだけど……」

セレネさん……まさか乾燥わら、入れてないですよね?」

「ううん!ちゃんと……朝露の……あれ?」

全員が一斉にセレネを見た。

「ま、まあまあ!美味しいならOKってことで!」

「根本的な解決になってないッスよ!」

ジンがスプーンを持ったまま突っ込みを入れ、夕餉の食卓は笑い声に包まれた。

第3章:夜の語りと、盗まれた時間

【1】夜は更けて、怪談は始まる

夜。

エルスティアの空は濃紺に染まり、遠くから港の灯が揺れていた。

道場の縁側では、七輪を囲んで何やら物騒な空気が漂っていた。

火に照らされた顔ぶれは、ジンリリアセレネカイマリマウ

そこに、鍋をつつくライと、今まさに笑みを浮かべるマリの姿がある。

「さて……お待たせ。今日の“語り”始めるわね」

「え?ちょ、待ってください。マリさん、それ本気のやつですか」

リリアが、すでに身構えていた。

その後ろで、セレネがクッションを抱いて震えている。

マリの“本気の語り”はな……前に聞いた町娘が、寝る前に全窓封印したからな……」

ライが渋く言えば、

「僕は聞いたあと、枕元に“封魔陣”描いたよ」

カイまで真顔。

「なにその“魔除け習慣”、日常に混ざりすぎでしょ……」

ジンは笑いながら言うが、マリは微笑んだまま口を開いた。

「ふふ。では、語らせてもらうわ――『泣く井戸』の話を」

その瞬間、風がふわりと吹いて、七輪の火が揺れた。

【2】『泣く井戸』

「それはね……市場の裏通りにある、古い石造りの井戸なの」

語りの中で、マリの声が少しだけ低くなる。

「誰も使ってない井戸なのに……夜になると、“すすり泣くような声”が聞こえるっていうのよ」

「……ただの風の音とかじゃないんです?」とリリア

「それが、実際に“見た”って人がいるの。――白い手が、石の隙間から出てたって」

ジンの手がぴくっと動く。

「そ、それは、こう……生きてる誰かのいたずら……的な?」

「じゃあ、どうして井戸の蓋、重し付きで開かないのかしら?」

「……物理法則じゃ説明できないやつだ!」

セレネはすでにカイの袖を掴んでおり、マウは冷えたお茶を一気飲みして咳き込んだ。

「ちなみに、昨日、ライさんが中を覗いたの」

「ちょっと!言うなって言ったろぉおおお!」

「“水の中に目があった”って。ね?」

「言ってない言ってない言ってない!おれ、目なんか見てないし!」

「うわあああああああ!!!」

ジンがその場にバタリと倒れた。

「お、お師匠ぉお!?」

「ダメだ……霊的な話になると、内臓が反応する体質なんだ……」

「そんなの初めて聞いたんですが!」

【3】突然の訪問者、ミッド参上

その騒ぎのさなか――道場の裏口から、ひょいっと顔を覗かせた者がいた。

「よぉ~~~。まだ起きてる?」

現れたのは、無造作に結んだ髪と革装備の青年。

ミッド・ジュー。軽妙な語り口と華麗な盗技を誇る、陽気すぎる盗賊(未遂)。

「っていうか、うわ、ちょ、何その空気!?誰か死んだ!?」

「怪談の最中でした。現場は混乱しています」

リリアが即答すると、ミッドは肩をすくめて笑った。

「なんだ~、怖い話?ならさ、俺の“肝試しネタ”聞く?

あれヤバいよ?一回目で姫様泣いたからね?」

「その話、聞いたことあるような……」

「いや、これは新作。“真夜中の防衛魔像とダンスバトルした話”っていう――」

「ちょっと待って。今、何て?」

「ん?魔像とダンス……」

「要素の繋がりが壊滅的ッ!」

ミッドは構わずどんどん話を進め始めた。

「でさ、魔像のくせにリズム感良くてさー、“足のキレが良すぎる”とかツッコミどころ満載で――」

延々と続く彼の話に、全員がじわじわと体力を削られていった。

【4】夜が明けた、そして被害者たち

気がつけば、空は薄明るくなり始めていた。

ジン → 完全に脱力して玄関マットの上で寝ている。

リリア → 残されたノートに「笑いで寝かせないの反則」とメモしてある。

セレネ → 眠りながら“井戸の蓋”を抱えている。

カイ → まぶたに“護符”を貼ってうたた寝中。

マリ → 怪談後のココアを一人で啜っている。

ライ → 胃にホッカイロを貼って寝落ち。

マウ → 口に「静かにしてね札」が刺さっている。

ミッド → ずっとしゃべってた。

「……というわけで、俺が“王城の洗濯場で裸足の精霊と出くわした話”は次の機会に――あれ?なんか、誰も聞いてない?」

静かな朝、鳥の声と共に漂う沈黙。

ミッドだけが元気で、他全員が寝不足になった夜だった。

第4章:静寂と実験と、魔法の爆音

【1】朝は静かに始まらない

朝。鳥がさえずり、空気は澄みわたり――

「…………静かだね」

と、ジン・ヴァリアントが縁側でつぶやいた。

「昨夜の“ミッド拷問会”のせいで、全員寝落ちましたからね……」

と、隣のリリア・シルヴァ。湯飲みを手に、少しだけ目がうつろ。

「今なら何が起きても……驚かない気がする……」

ライはお腹をさすりながらうずくまっていた。

静寂。まさに理想的な朝のはずだった。

が――

ド  ォ  ォ  ン  !!!

「……………」

地鳴りのような爆音と共に、東の窓がビリついた。

「……あ。起きた」

「いやいやいやいや!?これ爆発音じゃなかったです!?」

ジンが跳ね起き、リリアは茶をぶちまけ、ライはお腹を押さえながらうめいた。

「うっ……今の衝撃で昨日の冷えが再起動した……」

リリアははっきりと目が覚め、走り出していた。

【2】爆発の元は“あの人たち”

道場の裏手。広場の隅には、黒煙と魔法のススが舞っていた。

その中心に、二人の人物が立っていた。

ひとりは、ちょっとすすけたふわふわしたワンピースの女性。

何があっても優しさで受け止め、燃えた袖口を気にも留めぬ余裕。

セレネ・ノクティス

もう一人は、髪が逆立ち、顔がまるで花火を至近距離で浴びたような男。

カイ・ノクティス。当道場の頭脳担当、魔導書と爆発の相性を誤り続ける男。

「……で、原因は何?」

セレネの質問に、カイはややバツが悪そうに答えた。

「転位陣と加熱融合炉を同時起動したら、空間軸が“ちょっと”揺れた」

「“ちょっと”で朝が一回終わったのよ。わかってる?」

「でも今回は“人が吹き飛んでない”んだ。進歩と言える」

「ハードルが低すぎるわ」

【3】登場、街の発明家コルネ先生

そこへ、銀の工具箱を抱えた人物がやって来た。

「いやあ~、今日も賑やかでなによりなにより!」

声の主は、メガネに分厚い手袋、機械じかけの義手を持つ、どこかパンク風な中年女性。

コルネ・マグレイン。街の発明家にして、“故障の神”と呼ばれるトラブル体質の天才。

「また爆発?……あら、今回は壁まだあるのね。進歩じゃない」

「またって、先生、さっきの関与してるんですか?」

少しだけ呼吸が乱れたリリアが呆れ顔で尋ねると、コルネはにやっと笑った。

「ノクティス夫妻と私が揃ったら、そりゃ何かしらは爆発するでしょうよ。三爆士って呼ばれてるんだから」

「自覚してるんですね!?」

【4】爆発の裏に“実験”あり

リリアは服の煤を払いながら、全員に説明を始めた。

「今日はコルネ先生と、次世代魔導炉の試験だったの」とセレネ

「“静音魔導炉”と銘打っておきながら、最初に出た音が“爆音”なのは……」

カイが天を仰ぎ、コルネが先を続ける。

「まあまあ。でも今回は、魔力安定化は成功したわよ。爆発は副産物」

一番の常識人リリアは至極当然に・・・

「副産物が爆発な技術、やめません?」

コルネは、実験記録の巻物を開きながらこう言った。

「ちなみに、私の次の発明、“自動料理掃除楽器付き服”は、服が料理も掃除もやってくれるの。便利でしょう?」

「便利というか……動く理由が違いすぎません?」

「前に着せたら、勝手に鍋に飛び込んで味見しようとしたのよ」

セレネが補足。

もう呆れるのも通り越したリリアは・・・

「服に“好奇心”があるの、怖いですね」

【5】静寂は遠く、笑いは近く

結局、実験は無事(?)終了。

道場の昼食には、セレネ特製“爆発記念カレー”が並び、マウは炊飯器の上で「もう一回だけ爆発見たいな~」と呟いた。

「だめです!胃にきます!」

ライが叫ぶ。

「まあまあ、これも“日常”ってことで」

ジンが笑えば、

「日常って言葉、便利ですね」

リリアがため息をつく。

そしてその夜。

また道場のどこかで、魔力の微かな音が――

「ってまたかよおおおお!!」

ジンの声が空に響いた。

第5章『花と陰謀と、二人きりの昼下がり』

【1】穏やかな昼下がり、しかし…

その日は、町の花市が開かれていた。

道場組のうち、ジンは昼寝、ライは市場の屋台を調査中(名目)、セレネマウは花占い大会へ。

残ったのは――リリアカイ

「……あれ?珍しく二人きりですね」

「ほんとに珍しいな。爆発も怪談もない昼下がり……」

「言い方がすでに異常ですが、概ね平和です」

二人は街角のベンチに腰掛け、のんびりとした風に当たっていた。

周囲は花の香りに包まれ、商人たちの声が明るく響いている。

「こういう空気、実は好きなんだよなあ。静かで、ちゃんと世界が回ってるって感じでさ」

カイの珍しい“まとも発言”に、リリアは少し驚いたように笑う。

「意外です。もっとこう、“魔導加速花粉で空中栽培”とか言い出すタイプかと」

「言われたら実験したくなるじゃん、それ!」

「……あ、やっぱりその枠だ」

【2】一通の手紙、そして気配

その時、ひとりの少年がふらりと近づいてきた。

「これ、あのお姉さんに……って、渡してくれって言われました」

差し出されたのは、紫の封蝋が施された、香の強い手紙。

「……これは」

リリアの眉がぴくりと動く。

「知ってる封?それとも、怪文書?」

「どっちかと言えば……“陰謀の香り”ですね。ほんのりと」

カイが興味津々で手紙を覗き込む。

封筒には、こう記されていた:

『今宵、第二塔の裏路地。あなたの“答え”を待つ』

「誰がどう見ても怪しいですね」

「まるで“誘拐予告に来てください”って言ってるようなもんじゃん」

「しかし、ここで行かないと、物語が進まない気がするんですけど」

「わかる」

二人は数秒の沈黙を挟み――

「行きましょう」

「異議なし」

こうして、平穏だった昼下がりは静かに終わった。

【3】第二塔の裏、そして女の影

夕刻。第二塔の裏手、そこは人通りのない石畳の小道。

「誰もいないな……」

「うーん……“気配”は、あるんですよ」

リリアが視線を周囲に走らせたとき――

カツン、と高いヒールの音が響いた。

現れたのは、真紅のドレスを身にまとった女性。

大きな帽子に、顔の半分を隠す仮面。

「お久しぶりね、“銀の瞳の記録者”」

リリアは息をのむ。

「……あなた、王都情報局の……?」

「名は捨てたわ。でも、伝えるべき“兆し”があって来たの」

女性は静かに巻物を差し出す。

「その巻物に、ある“断片”が眠っている。近いうちに……あなたたちは選ばれる」

「選ばれる……?」

「闇と花は、時に同じ場所に咲く。気をつけなさい。“彼女”は、すでに目を覚ましている」

その言葉とともに、女は風のように姿を消した。

【4】帰路と気づき

「……えーと、カイさん。さっきの話、どこまで理解しました?」

「うーん……“彼女”って誰?」

「そこなんですよ!」

巻物を開けば、謎めいた詩と断片的な図形、そして古代語の名前らしき文字列。

「これ、“神の断片”と関係あるかもしれませんね……」

「うん。ていうか、絶対そうだと思う。あの女の人、ラスボスっぽかったし」

「それ言っちゃいます!?」

二人は歩きながら言葉を交わし、道場へと戻っていく。

すでに空はオレンジ色に染まり、何かが確かに――動き始めていた。

第6章『突撃!道場査察隊!~来るなって言ったのに~』

【1】朝、封筒は唐突にやってくる

道場の朝は、基本的に騒がしい。

だが、この日は“違う意味”でざわついていた。

「これ、なんですかね……?」

リリアが手に持っているのは、公印付きの分厚い封筒。

「“王国総務査察局・第八機動課”……って書いてあるけど、こんな部署ありました?」

ライが眉をしかめる。

「知らん。少なくとも俺が火をつけた役所のリストにはなかった」

カイが真顔で言った。

「“つけたリスト”って何!?」

中を開くと、丁寧な筆致の書状が現れる。

『予告査察に関するご通知

本日午後、貴道場における規律・秩序・倫理・経理・衛生の観点から、抜き打ち検査を実施いたします。

なお、過去の火災・爆発・“牛の乱入”事案等についても再調査の対象とします』

「いや、牛は自然災害ですよね!?」

「衛生……あっやばい。俺の部屋、未確認生物いるかも」

ライが目を泳がせる。

「私は服が勝手に洗濯機に逃げ込むのを見ました」

セレネが冷静に呟いた。

「…………もうだめだわ」

ジンは天を仰いだ。

【2】査察隊、ついに来る

そして午後。

やって来たのは、黒い制服に身を包んだ査察隊6名。

「失礼いたします。“アグロス道場”ですね。査察局第八機動課、主任補佐のギルダ・ファミリエです」

長身でメガネ、完璧な文官姿の女性が名乗る。

後ろには、無表情の男性陣と書記風の青年たち。

「どうぞお好きに調べてってください(※ただし物理的接触は自己責任で)」

ジンが棒読みで迎える。

「まず、入門書類の確認から」

「書類……?」

マウが首をかしげる。

「ありますよ、“だいたいの記録”っていう箱にまとめて」

「正式文書の提出記録、存在しません」

「“だいたい”だったから!」

【3】“規律と秩序”の溶解戦争

「次に、規律面。道場内の規則は?」

「えーと、1日1爆まで。あと、夕飯は“火の魔法禁止”」

「……どちらも異常です」

「規則って、守るものじゃなくて、起きてから考えるものですよね?」

ライが発言して、書記の筆が止まった。

「危険思想と記録します」

「記録すんな」

【4】調理場と“カレー色の闇”

「では調理場の衛生を――って、あっ!な、なんですかこれは!」

ギルダ補佐官が冷蔵庫を開けて絶叫した。

「それ、セレネの“3日熟成カレー”ですね」

リリアが微笑む。

「白い何かが動いているような……!」

「香りも生きてますから」

「生きるなぁ!」

「あとこれは……“しゃべる鍋”?」

「違います。“叫ぶ鍋”です」

「カテゴリーの意味が不明です!!」

【5】最後の爆発と、審査結果

調査の終盤、魔導炉区画の確認に入った瞬間――

\ボンッ!!!/

突如、カイの実験炉が小爆発を起こした。

「ぬわっ!?何だ!?何をした!?」

「ご安心ください、予定通りです」

「これ“予定”なの!?!?」

「むしろ、今日は爆発一回しか起きてないので、合格点ですよ」

ギルダは震える手で、審査用紙に何かを書きつけた。

【6】意外な“最終結論”

数時間後。

全ての記録と証拠品を片付け、査察隊は玄関先で一礼した。

「……信じがたい部分も多々ありましたが、総合評価は“非推奨ではあるが存在を許可”

「なんて微妙な表現!?」

「ただし、今後さらに爆発件数が増加した場合、強制修繕命令が出る可能性があります」

「修繕じゃなくて、修道院行きじゃないだけマシですね……」

ジンがぼそりとつぶやいた。

ギルダは少しだけ表情を緩めて言った。

「それでも、ここには“何か”があると感じました。常識外ですが……奇妙に温かい」

そう言って、彼女は静かに去っていった。

残された道場メンバー。

「……評価されると、逆に不安ですね」

「来週の実験、静かにやろうか」

「うん、静かにして、爆発だけ派手にしよう」

「つまりいつも通りですね?」

こうして、道場の日常は続いていく。

第7章『獣と踊る、月夜のバーベキュー』

【1】山に来たら肉を焼け

「今日は、肉を焼きます」

リリアの宣言で始まった今宵の遠征。

「……また何の脈絡もなく始まりましたね」

ジンが荷物を背負いながらつぶやく。

「いや、順序はちゃんとありますよ。“道場→査察→生還→祝勝→焼肉”です」

ライが得意げに指を折る。

「“生還”が前提になる時点で、何かが間違っているように思えます」

マウが小さく突っ込む。

今日は月夜。道場組は山奥の開けた空間でバーベキュー大会を敢行中。

「この薪も、この鉄板も、この網も、すべて私が“魔導キャンプセット・強化型”として開発しました!」

カイが自慢げに鉄板を設置している。

「煙が虹色なんですがそれは」

「副作用です(たぶん無害)」

【2】肉と野菜と、焼くなと言われたタマネギ

セレネさん、肉焼きすぎですよー!」

「ふふふ、神は火と肉を等しく愛した。これは儀式です」

「いや食事ですって!」

一方、ジンは黙々と野菜を焼いている。

「俺はもう学んだ……タマネギは焦げる前に食え」

「前回は、焦げたタマネギを“漆黒の旨み”と称して召し上がっていらっしゃいましたよね」

マウが静かに指摘する。

【3】しかし、静かな夜は続かない

そのとき。

森の奥から――ふしぎな足音が響く。

「……なんか来たよ?」

「パチパチじゃなくて、ズズズズ……って音ですね……」

リリアが耳をすませる。

ライが弓を手にして、カイが鉄板を盾代わりに構える(なぜ)。

「まさか……この香りに誘われて……」

「まさか?」

全員が固唾を飲む。

――そして現れたのは、

\ギュルァアアア/

モフモフした大型四足獣だった。

背中に植物が生えており、耳はウサギ、目はとてもキュート、牙は鋭利。

「……なにその混合生物!?」

「森の幻獣“モクモフ”です!!」

「説明できるのお前だけだなカイ!!」

【4】食べるか、食べられるか(※比喩じゃない)

「接近してくる!逃げるか!?」

「いや待って、目が……肉に向いてます!」

「肉目当てかよ!」

セレネが焼き網ごと抱えて後退する。

「これは儀式の供物!お前にやらん!」

「※儀式じゃない」

マウが一歩前に出る。

「前回は、幻獣との間に、交渉の余地は……あるかもしれません」

リリアがすっと出す。「……この、野菜串なら……」

モクモフ「……(ぱく)」

全員「食べたーッ!?」

【5】和解と、友情と、追加の焼きマシュマロ

どうやら幻獣モクモフは、焼かれた野菜が好きらしい。

とくに焦げ目のついたトマトをたいそう気に入り、体毛をふるふる揺らして喜んでいる。

「……トマトって、焼くと感情を超えるんだな……」

ライが感心している。

ジンはモクモフの背中をぽんぽん叩きながらつぶやいた。

「これ、ペットにできるのか?」

「やめてください、いろいろ“飼えない要素”が詰まってるから」

マウが本気で止めた。

その後、彼らはモクモフと“肉の一部”を分かち合い、共にマシュマロを焼いた(主にライセレネの独断)。

「これでうちの道場、“幻獣とバーベキューした数少ない組織”として認可されませんかね」

「何その認可。誰が出すの」

リリアがため息をつきつつ、モクモフの頭をなでていた。

第8章『図書館の幽霊と、秘密のお茶会』

【1】夜の依頼は静かにやってくる

ある日の夕方、町役場から1通の依頼書が届いた。

『王立第五書庫にて、夜間、不可解なページめくり音と紅茶の香りが漂うという報告多数。

幽霊、または未知の魔術生物の可能性あり。調査と対処を要請』

「……いや、なんでその現象から“紅茶”出てくるの?」

「紅茶の香りって、だいたいスコーンとセットですよね」

セレネが当然のように答える。

「それはお前の茶会観だろ」

「……しかし、これは好機です」

リリアが目を光らせる。

「何の?」

「王立書庫の地下階は、通常関係者以外立入禁止。けれど、これが調査名目で踏み込めるチャンス!」

「なるほど、幽霊調査にかこつけて資料漁りと……」

「やる気出してる方向が怖い」

マウが真顔でつぶやいた。

【2】深夜、書庫突入(静かに)

そして深夜0時――

メンバーは静かに第五書庫へと潜入する。

「ここか……想像以上に広いな」

ジンが天井を見上げる。

「本棚だけで3階分あるし、螺旋階段も軋んでる。完全に“出そう”ですね」

ライが妙に嬉しそうだ。

リリアは耳を澄ます。

「……ページをめくる音。下の階から」

彼らはゆっくりと地下階へ降りていく。

薄暗い書庫の奥――

一冊の魔導書が、ふわりと宙に浮かび、勝手にページをめくっていた。

「出た……!」

カイがささやく。

「しかも……香るぞ……アールグレイ」

「やっぱり紅茶なのかよ」

【3】それ、幽霊じゃなくて“あの人”では?

すると――宙に浮かんだ魔導書のそばに、ふんわりと影が現れる。

白いワンピース、帽子、ティーカップを持った女性の幻影。

「……あ」

「知り合いか?」

「違いますが――でも、その姿……」

リリアがぱっと顔を上げた。

「これ、“古書の精霊”ですね」

「また新しい単語が出たな!」

「王国書庫の魔導結界の副産物。本が長期間読まれずに放置されると、“読まれたい”という想念が精霊化することがあるんです」

「読書欲が、実体化……?」

「すごいな王国技術。常に事故ってる」

【4】そして、はじまるお茶会(なぜ)

精霊は彼らに気づき、ふわりと会釈した。

そのまま、ティーセットを宙に出現させ、テーブルと椅子も発生。

「えっ、これ……座れってこと?」

「これは――**“書庫の試練”**ですね」

「試練にしては優雅すぎないか?」

リリアが小声で説明する。

「精霊が招いた“読者”は、本と茶菓子と対話を通じて、知の価値を試されるんです。答えられないと、帰れません」

「帰れませんて……!」

「ちなみに“無礼な態度”だと即座に茶器が爆発するらしいですよ」

「なんで爆発すんだよ!?!?」

【5】問われる、知識と教養(と好物)

精霊の口から、やさしい声が響く。

「では皆様――“本とは何のために存在するのでしょう?”」

「いきなり核心!」

セレネが手を挙げた。

「退屈な午後を倒すためです!」

「ある意味正解だけどちがーう!」

マウが続けて静かに答える。

「……誰かの“生”を、時間を越えて繋ぐ器、でしょうか」

精霊が微笑む。どうやら合格らしい。

続いての問い:

「“紅茶と最も合うお菓子は?”」

ジン「ようかん」

ライ「かっぱえびせん」

カイ「固形魔力菓子(MP50回復)」

「全員違う!!!」

茶器がガタつき始める。

「ちょ、待って待って!えーっと、えっと、スコーン!スコーンです!」

リリアが慌てて叫ぶ。

茶器、停止。

【6】書を愛したものへ、夜は微笑む

最終問:

「“貴方が最後に読んだ本の名前は?”」

静かに、ひとりひとりが答える。

ジン「料理無双 第3巻」

ライ「異世界転生で無敵の百合」

セレネ「恋と呪いと予算会議」

カイ「爆発は友達(新訂版)」

マウ「魔術古語辞典 上中下(下は借りパクされた)」

リリア「“銀の記録者と時の連環”――私の、最初の夢です」

精霊が、ふっと目を細めた。

「それなら、貴女は“ここ”に来るべき人でした――」

そして彼女は、宙に舞い、

古い本の一冊へと溶け込むように消えていった。

【エピローグ】

数分後。図書館の灯が静かに戻る。

「結局……お茶会だったな」

ジンがぼそっと言う。

「おかわりすればよかったですね……あの幻のお菓子……」

セレネが未練げに指をなめる。

リリアは静かに、精霊の入った本を抱きしめていた。

「いつか、この本の続きを――書いてみたいな」

誰もそれを否定しなかった。

第9章『運命のステージ!笑って叩けファンタジー音楽祭』

【1】フェス、それは混沌の響き

ある朝、道場にでかすぎる太鼓が届けられた。

「え、これ誰宛?」

ジンがあり得ないものを見るように、目をこすりながらつぶやく。

「おそらく私たち宛ですね」

マウが差出人を確認しながら言う。

『音楽祭出場者:自称“精霊道場一座”様。エントリー完了済。演目:即興打楽バトル。ご健闘を。』

「まさかとは思いますが、どなたがエントリーなさったのですか……?」

「…………(そっと目を逸らすリリアセレネ)」

「そっちかーーー!!!」

【2】音楽祭、それは戦いの予感

毎年この時期、王国各地で開かれる音楽と芸能の祭典。

町の住民が楽器や踊り、劇で競い合い、最も笑いと感動を取った者が“陽光杯”を手にする。

何事かと寄ってきたカイが状況を察して・・・

「つまりこれは……芸の勝負ってことだな?」

まだ信じられないびっくり目のマウが・・・

「芸? 私たちに?」

ジンが問題の二人以外の全員の感じている事を言い当てる。

「むしろ一番向いてない方向では?」

だが、リリアセレネは意気込んでいた。

「今回は**“即興ステージ演劇+打楽器セッション”**です!」

「なんでまた複合競技……?」

「大丈夫です、練習すればなんとかなります!」

「当日ですよ、今日が!!」

後でギシッと床がきしむ音。

わざと話に入らないようにこっそり出ていこうとしたが、隠密に向かない体のカイ

カイ! どこ行くの?」

セレネが先端が三日月の形をした杖を振りかぶりながら・・・

【3】幕が上がる。タイトルは『伝説の鍋と、叩きすぎた村』

ドンドン! カンカンカン! キーン!(鍋)

本番開始5秒で、鍋の蓋が吹き飛んだ。

「始まってるううう!?!?」

――道場チームの出し物は、リリア脚本による“即興演劇仕立ての太鼓ショー”。

【設定】

かつて世界を救った鍋の精霊をめぐる、勇者と料理人の物語。

(※全員即興、台本2行)

登場人物:

ジン:真面目な勇者(太鼓担当)

セレネ:鍋の精霊(踊りと鍋蓋シンバル担当)

カイ:怪しい調味料商人(カスタネット持参)

ライ:敵対する音楽騎士団長(ギターっぽい弓)

マウ:ツッコミ役(全楽器兼任)

【4】即興とは、暴力と紙一重

セレネ「わたくしこそは、鍋の精霊!その蓋を叩けば、世界が踊り出す!」

ジン「なんだその設定!」

カンカンカン! キラキラ音+スモーク(カスタネットとカイ製の小型発煙装置)

ライ「世界を支配するのは、リズムだ!!」

ギュィィン!(弓で竪琴を強引にこすり鳴らす)

マウ「どなたか、この混沌とした寸劇を止めていただけませんか……!」

※ツッコミのバチさばきが異様に正確で拍手が起こる

観客「ワーッ!何この混沌!面白い!!」

【5】そして鍋は飛ぶ(物理)

クライマックス――

セレネ「いま、蓋を全力で叩きます!勇者、受け取ってッ!!」

ジン「やめろッ!鍋の蓋は武器じゃ――」

\ガコン!/

蓋、ジンの盾にヒット。音が妙にいい。

観客「オオオオオオ!!」

(なぜかスタンディングオベーション)

カイが叫ぶ。(楽しくなってきた)

「この音――伝説の“開蓋音(かいがいん)”!!」

リリア「(即興じゃなくなってる……けど面白いから続けます!)」

【6】勝敗は爆笑の彼方へ

最終判定。司会者が発表する。

「陽光杯、今年の優勝は――」

「精霊道場一座、鍋とバチの即興劇!!」

\ワアアアアア!!!/

観客からも大喝采。

だが、道場メンバーはステージ袖で倒れこんでいた。

ジン「……もう、太鼓、見たくない……」

セレネ「私も……蓋が脳内で鳴ってます……」

リリア「でも……勝ちましたね!」

マウ「……笑いとは、すべてを凌駕するものなのですね……」

カイ「よし、来年は空中演舞と液体楽器でいきましょう!」

全員「やめておけ!!!!」

第10章『誰がための祝祭と、こぼれ落ちた祈り』

【1】祝勝会は止まらない

陽光杯の優勝から一夜――

道場では町主催の祝勝会が開催されていた。

「はい!こちら“優勝記念・鍋シンバル再現ケーキ”です!」

「音が鳴るケーキってなんだよ」

「これ、叩くとスポンジの中からゼリーが飛び出します!」

「武器じゃねぇか!」

セレネは笑顔満開でバチを構える。

「いっきますよー!」

\ドーン!/

\プルンプルン!(ゼリー飛散)/

リリア「見てください!感動で泣いてる人がいます!」

ジン「ゼリーが目に入っただけだ!」

【2】祝勝パレード、出発進行(空中)

さらに町長の一声で、優勝記念のパレードまで決定。

「何で我々、空飛ぶ馬車に乗せられてるんですか」

「浮遊魔術の実験も兼ねてるそうです!」

ライが前向きに答える。

「それ、絶対落ちるフラグ!!」

案の定、空中で魔力が不安定になり――

\フラァ……/(傾く)

ジン「やばい傾いてる!セレネ、荷重バランス取って!」

セレネ「わかりました!ほら、ゼリー投げてバランスを……」

ジン「その発想をまずやめろォ!!」

【3】プレゼントは大爆発(物理)】

パレード後、次々と町の人々がプレゼントを持って訪れる。

町のパン職人「精霊道場の皆さんに、“炎の祝パン”です!」

カイ「え?これ……ほんとに炎が――」

\ボッ!/(パンが着火)

カイ「これは……新しい調理の可能性!!」

マウ「前向きに捉えていらっしゃるのは、カイ様だけのようです」

セレネはすかさずバターを塗りながら一言。

「この焦げ方、詩的ですね……“美味なる無常”って感じです」

【4】夜空のサプライズと、バトルオルゴール

祝勝会の終盤――

リリアが町の子どもたちに向けて、特別な仕掛けを用意していた。

「さあ、みんな静かにして……“星の音楽箱”を鳴らしますよ」

小さなオルゴールを開くと――

空にゆるやかな音が響き、まるで夜空が共鳴するように星がまたたく。

子ども「すごい……!」

ライ「これ、星図魔術と連動してるのか」

ジン「静かな感動、いいな……ずっとドタバタだったから」

カイ「オチは?」

セレネ「落とさないで」

【5】それぞれの願い、それぞれの夜

祝勝会も終わり、皆が帰っていく中――

セレネは空を見上げてつぶやいた。

「こんな風に、毎年笑ってられたらいいですね」

マウ「……来年も、誰かが笑ってられるように。そんな願いを込めて、祈ります」

ライ「お言葉、ありがたく頂戴いたします。ご心配には及びません、平熱ですので」

少し皮肉を込めて、マウ「では、ライ様には不要な祈りかもしれませんね」

知ってか知らずか、ライは「はいーーー」

ジンはひとり、開いたままの“銀の記録者と時の連環”を眺めていた。

リリアがそっと横に立つ。

「この物語、続きがある気がするんです――でも、まだ思い出せない」

「思い出す必要があるのか?」

「わからない。でも……今夜みたいな静かな時間が、誰かの祈りに繋がってたらいいなって」

【6】余韻:そして、遠くで“光る声”が

静かな夜の、町の外れ――

人知れず開かれた、小さな神殿の前に立つフードの人物がひとり。

その手には、かつて“誰か”が落とした祈りの欠片。

割れた小さな勾玉のようなそれは、月明かりを浴びてほのかに光っていた。

「……まだ、思い出してはいけない。けれど、あの子たちは、確かに近づいている」

彼女はそっと、祈りのようにその石を胸に当てる。

「いつか、“神の断片”が揃う日まで」

彼女の姿は風に溶けるように消えた。

星が、またひとつ瞬いた。

お問い合わせはこちら(^^)/

PAGETOP
Copyright © いもーれ たゆたう All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.